-
Blog
-
Blogブログ
Blogブログ
2023.02.15ブログ
イッテンもの
こどもの頃から「イッテンもの」という言葉が好きだった。
SMAPの『世界に一つだけの花』なんて歌が大ヒットするずっと前から、
「世界に一つ」に心奪われてきた。
アートに興味を持って、
大学で日本美術史を学んだのも、
その延長で着物にハマったのもそれが理由だ。
そのうち、自分で「世界に一つ」の着物を自分で作りたくなった。
とはいえ、いきなり反物の染めだの織だのをはじめるわけにはいかず、
それならば、と、
日本刺繍を習い、
帯やバッグに施して
「イッテンもの」を作れるようになった。
でも、子どもが出来て、針の刺さった刺繍台を出しておくのが怖くなり、
着物に刺繍ができる腕前になる前に止めてしまった。
粘土なら危なくないだろうと、
”アートクレイシルバー”というものに
手を出した。
インストラクターの資格を得て
「世界で一つ」のシルバーアクセサリーを作り、
オーダーメイドの作品を受注生産したりして、
自分の生み出した「イッテンもの」で
誰かをよろこばせることができるようになった。
ある日、ふと気が付いた。
「あれ・・・わたし、こんなの作らなくても、
毎日めちゃめちゃ面白い『イッテンもの』作ってたわ・・・」
こどもは『もの』ではないけれど、
誰もがこの世界に唯一無二の存在で。
子育ては、
自分が思うようにはいかないし、
正解もないし、
環境に左右されるところがものすごく大きい。
それは
芸術品の制作に似て、
それよりもずっとずっと大変なことだと思う。
うまくできなかったから、
作る前に想像していたものと違うから、
といって、
途中で投げ出すわけにも
壊して一から作り直すわけにもいかない。
お金をかければかけるほどいいものが出来るわけでも、
風雨にさらされることのないように大切に閉じ込めて、
傷がつかないようにすれば価値が上がるわけでもない。
おまけに、
人間の『完成形』が終末の姿だとすると、
たいていの場合、
うんだ本人はその『完成形』を見ることができない。
でも、だからこそ、
その過程にドキドキするし、ワクワクする。
自分の手をほとんど離れた後に、
どんな奇跡との出会いを重ねて
経年変化していくのか。
それも楽しみで、
にやにやしてしまう。
そんな、
子育てにも似たモノづくりをしている人が、
「日本のへそ」とも呼ばれる、兵庫県西脇市にいる。
播州織アーティストの玉木新雌(たまき にいめ)さんがその人だ。
彼女の作品に偶然出会った時、
その考え方、
目指すもの、
モノづくりに対する「変態的」こだわりに
非常に共感を覚えた。
tamaki niimeブランドの作品はすべてが「イッテンもの」である。
だから私は彼女の作る作品を愛してやまない。
自分の作った「イッテンもの」と
tamaki niimeの「イッテンもの」を身につけて、
「『イッテンもの』のちょっと変わった国語塾」を自負する教室で、
とってもとってもありがたいことに、
今日も「イッテンもの」を作る(育てる)お手伝いをさせていただいている。
そんな今の自分が大好きだ。
※写真はtamaki niimeのラボ(工房)